2008年12月30日

【コラム】フィリピン人女性に対する先入観 (1)

一部のマスコミの偏った報道のせいもあるのかもしれませんが、多くの日本人はフィリピン人、こと女性のフィリピン人についてかなり誤解をしているように思います。斯く言う私も実際にフィリピン人の知り合いができるまでは、大雑把な理解は完全に間違っておりました。

特に、フィリピン人女性と日本人男性のお金に関するトラブルは、枚挙に遑がなく、そのほとんどが日本人男性がフィリピン人女性に金銭を騙し取られたというものです。

もちろん、日本人男性から故意に金銭を巻き上げたフィリピン人女性も数の上ではかなりいるのでしょうが、実際のトラブルは両者の思い違いによるものがほとんどで、悪意があるものは少ないのではないかと思っています。

たとえば、数ヶ月前、インターネットの質問掲示板にこのような内容の質問が挙げられておりました。

自分は、インターネットで知り合ったフィリピン人女性が、自分に会いに日本に来たいというので、お金をあげた。
幾ら必要か尋ねたら、30万円必要だといったので送金した。
しかし、約束の空港で待っていても、一向に現れない。
30万円がもったいないとは思わないが、この手の悪質な詐欺を行うフィリピン人女性にお灸をすえる意味でも、法的に訴えたい。
何か良い方法はないだろうか?

この質問に対する回答は、何件か書き込まれていましたが、ほとんどが、「こんな見え透いた詐欺に引っかかるほうが悪い。頭を冷やして、泣き寝入りしろ」というものでした。中には、片道航空運賃ぐらいは調べてから行動しろというような内容もあったように記憶しています。そして、質問者も含めた、ほぼすべての方々が、その女性は日本に来る気などはじめから無かった。30万円をまんまとせしめて、マニラで半年遊んで暮らすつもりだったのだ。という暗黙の同意の上で話を進めていました。

それを読んだときの私は、確かに一度も会ったことのない外国人に30万円も渡すなんて非常識すぎると思い、多くの回答者にほぼ賛同していました。

しかし、今になって思い出すと、この30万円という金額は何なのか。なぜこの二人の男女は会うことが出来なかったか、単なる詐欺ではないストーリーを想定することができます。

まず、この30万円という金額、これは、フィリピン人女性がタレントとして日本に出稼ぎに出る前に、フィリピン国内のエージェンシーに借金する金額とほぼ同額です。30万円の中には、飛行機のチケット代だけではなく、ビザ申請手数料や、受け入れ先になる日本のフィリピンパブとの調整手数料、タレント登録に必要な歌やダンスのレッスン料など諸々の料金が含まれているようです。

では、この30万円の内訳をもう少し……って、実は、そんなものどうでもいいのです。エージェンシーはタレント一人ひとりにマネージャーをつけて、なんだかんだと世話を焼くふりをして、とにかく30万円の借金をさせます。30万円といえば、若いフィリピン人女性たちにとってかなりの高額です。本当に返せるのでしょうか?もちろん担保なんてありません。しかし、これらのことを知っていれば、それが理解できます。

  1. タレントたちが日本で働いている間、日本のプロモーターから払われる基本月給の相場が約5万円(500米ドル)
  2. タレントに与えられる興行ビザで、最長6ヶ月間日本に滞在できる
  3. 現金は帰国時の空港で、プロモーターからエージェンシーを通して諸々差し引いた金額がタレントに支払われる

つまり、5万円×6ヶ月=30万円 は、確実にプロモーターを通じてエージェンシーの手に入るのです。逆にタレントたちは、名目上、毎月500ドルもらったことになりますが、実際にはエージェンシーに巻き上げられるのです。

2005年以降は日本政府がフィリピン人タレントの受け入れの制限を急に厳しくしたために、順番待ちのタレントがフィリピン中に溢れました。この順番待ちを繰り上げて、ひとよりも先に日本に行くためには、自分で30万円を準備して、エージェンシーに前払いで交渉すると、俄然有利になります。

前出のフィリピン人女性が要求した30万円はこの30万円ではないかと思うのです。

これらを片言の日本語を駆使して、日本人にわかるように整理して説明するのはフィリピン人女性にとって、極めて困難でしょう。

でも、あなたはこう思うかもしれません。格安航空チケットを使えば、10万円もあれば、観光ビザで来日して、彼に会って帰ることができたじゃないか。

私もそう思いました。でも、それは無理なのです。日本政府は、ほとんどのフィリピン人に対して観光ビザを発行しません。理由は観光ビザで来日したフィリピン人が不法就労する可能性があるからだそうです。

ですから、彼女が日本にやってくるためにはやはり30万円が必要だったのです。

と、いうことは、彼女は日本に来たのでしょうか? もし本当に日本に来たのなら、なぜ空港で会えなかったのでしょう。

フィリピンのエージェンシーと日本側のフィリピンパブの間に立って、入国手続きや来日3ヶ月後のビザの延長申請などの諸々を請け負う日本のプロモーターは、今、フィリピン人タレントの扱いについて、極めて神経質になっています。既に法改正によって日本国内のフィリピン人タレントの確保が難しくなっている状況で、大きなトラブルがあると困るからです。

飛行機を降りたら、空港から彼らの用意した車で該当するフィリピンパブにタレントたちを配って行きます。

空港で待ち合わせという、ドラマのようなシチュエーションを想定したことが裏目に出たのではないでしょうか。

でも、空港で待ち合わせができるかどうかなんて、彼女は分かっていたんじゃないの?

いや、たぶん、彼女は自分がどうやってフィリピンパブまで配られていくか、そのプロセスの中で、いつ、どれくらいの空き時間が取れるかなんてことは、全く知らされていなかったと思います。

もちろん、これは私の勝手な想像にすぎません。この件に関しては、日本人男性がまんまと30万円を騙し取られただけなのかもしれません。

でも、私が出会ったフィリピン人達は、日本人から30万円騙し取って、「フン、このスケベ親父め」と鼻息で吹き飛ばすことができるような勢いのある人は一人もいないのです。

確かに、日本に来ているフィリピン人たちは男女を問わず、故郷の家族に送金するために働いており、お金を得ることに貪欲です。しかし、だからといって他人からお金を騙し取ろうと考えているわけではないということは理解しておく必要があると思います。

・・・

でも、不思議ですよね。6ヶ月間、5万円/月 の給料を得るために30万円の借金をしたのでは、何の意味もありません。それぐらいのことは、彼女たちも十分理解しています。では、彼女たちは何のために日本に来るのでしょう?

彼女たちの実質の収入は、生活費としてお店から渡される3,000円/週 程度と、お客さんからの指名料やチップなどです。彼女たちは、生活を切り詰めてそれらを貯め込んで、毎月1万円程度を家族に仕送りします。つまり、この1万円/月 を得るために日本に来ていると考えていいでしょう。フィリピンの田舎なら1万円あればどうにか一家族が暮らしていけます。

彼女たちのマネージャーは、フィリピンにいながらにして、タレント一人当たり毎月5万円を丸ごと手に入れるわけです。まさに濡れ手に粟。貧富の差は広がるばかりですね。