少し古いですが、気になる記事を見つけました。
フィリピン人一家の在留不許可 「可哀そう」か「自業自得」なのか
これは、J-CASTニュースの2009/3/12の記事ですが、このブログでも何度か取り上げてきたカルデロン一家に関する日本国内の反応について書かれています。
この記事のタイトルは、この一件に対する多くの日本人及び一部のフィリピン人の反応をよく表していると思います。
この一件に対して意見を述べた多くの人の反応は、「かわいそうだから、日本にいさせてあげて」「違法なのだから出て行け」のどちらかに二分されていたように思います。
つまり、どちらにしても他人事なのです。
まずは、両親が犯罪者であれ、自分が犯罪を犯したわけではない一人の中学生を日本政府がどう扱うのか。それは「かわいそう」だからではなく、日本国籍は持っていなくても、日本で生まれて日本人として生きてきた人をどう扱うかという点で注目すべきでしょう。
「これまでに何人も国外退去になっているんだ、おまえだけゴネるなんてずるい」などという意見がインターネット上に散見されますが、過去の処置が今の時代に合わなくなっているなら、新しい関係性を作り出していかなくてはならないはずです。
例えば、何かを盗んだとか、人を傷つけたというのならば、即時拘束して、罰を与えなければ、被害が拡大する可能性があるでしょう。しかし、違法と言っても、入管法です。世界各国で解釈が異なる微妙な法律なのです。もちろん、偽造パスポートで入国するという行為はどこの国でも違法ですが、その後の処置は国ごとに全く違います。「違法だから出て行け、それが嫌なら日本に来るな」というのは、一見単純明快で理にかなっているようですが、国際的な視野で見ると、必ずしも妥当であるとは限らないのです。
また、インターネットの意見を読んでいると、外国人が労働者として入国することにヒステリックに反対している方もおられるようですが、そもそも、日本人が単一民族だという考え方は、戦前の日本政治がファシズム的要素を濃くしてきた流れで、外国人に対する日本民族の優位性を強調した歴史の名残であることも理解しておく必要があります。
もちろん、この単一民族国家思想は、戦後の廃墟であった日本を高々50年という人類史上類を見ない超短期間で世界有数の経済大国にのし上げた一大原動力であったことは間違いないと思います。とはいえ、歴史的な事実や、DNAを使った調査結果などから、日本人が単一民族でないことは既にはっきりしています。
にもかかわらず、いまの若い人たちが、あまりに1900年代初頭の思想に引きずられて国際的なものの考え方が出来なくなっているとしたら、これはあまりにも悲しいし、これからの日本は国際社会から孤立していしまうことになるでしょう。
また、日本人として、「日本で産まれ育ちながら、日本国籍を持っていない人」と聞いて、最もはじめに気にしなくてはいけないのは、戦前、朝鮮半島が日本の占領下にあったとき、労働単価の安い日本人として朝鮮半島から移住させた人たちの子供や、孫のことでしょう。
日本政府が、アジア各国のみならず、欧米などからも、外国人労働者の受け入れについて指摘されながらも、どうしても前向きな議論が出来ない理由は、犯罪率の増加など本質ではなく、在日朝鮮人2世、3世の問題をうやむやにしたままなので、次のステップに踏み込めないのだと思います。
実は、今回の日本政府のカルデロン一家の扱いに関しては、単にこの家族が「かわいそう」とか、「ゴネ得だ」とかいうレベルの問題ではなく、これからの日本が、世界の中、アジアの中の日本としての自覚を持つのか、それとも「よそのことは知らん、日本は日本」という未熟で閉鎖的な態度を取り続けるのか、大きな分岐点であったわけです。
バブル絶頂期に、香港が中国に返還された後のアジア経済中心地として東京が挙がっていたことがありました。このときも、外国人が東京に増えることに躊躇し、二の足を踏んでいるあいだにシンガポールにその座を奪われたのです。あのとき、躊躇無くアジア経済の中心地になっていれば、バブル崩壊後の失われた10年は無かったか、あるいは、もっとゆるやかなものであったでしょう。アジア経済を日本が見ていれば、リーマンショック後の世界経済の崩壊からアジアを切り離せたかもしれません。
ヨーロッパはEUの通貨統合以降、さまざまな問題をはらみながらも、着実に国際競争力を取り戻し、ソビエト崩壊後の対アメリカ勢力の一翼を担おうとしています。そこに、アジア代表として日本が手を上げることが期待されていたわけですが、結局、今度も中国が先に名乗りを上げてしまいました。慌てて国内の反中感情を高めようとして、マスコミに対して中国の反日運動ばかり報道させていますが、もう手遅れです。
今後、中国の急激な台頭に対処するために世界はブロック経済状態に移行するでしょう。欧米は、日本と韓国を巻き込んで世界経済から中国を切り離そうとしています。これを機に韓国はアジア経済を韓国中心にまとめるための動きを活発化させています。日本は、アジア各国の政治が成熟しておらず、まだまだ交渉ベタであることをいいことに、不平等なFTAやEPAを結ぶことばかりに躍起になっています。EUやアメリカと肩を並べるためにはアジア経済全体の底上げが必要です。いまさら日本だけに有利な経済条約を結んだところで何にもならないのです。アジアブロックの代表としてその他のブロックと対等に交渉できるだけの支持を取り付けておかなければ、また、ただただ世界の流れに翻弄されるだけの国になってしまいます。
ですから、国際的な話題に関して、特に若い人たちには近視眼的な発想で、ヒステリックに自分の意見をぶちまけるのではなく、できるだけ広い視野でもって捕らえる癖をつけて欲しいと、改めて感じました。












